国家・地政学約 5分

FacebookのLibra:世界通貨構想は資産売却へ

Facebookは2019年、日常のメッセージアプリから使える世界通貨としてLibraを発表した。しかしDiemに改名したプロジェクトは、2022年1月に決済網の資産を売却した。発表資料、米上院での証言、スイス当局の記録から、通貨バスケットが米国の銀行によるドル商品構想へ変わった過程を追う。

FacebookのLibra:世界通貨構想は資産売却へ

3点クイック要約

  • 発端 / 逆説Facebookは2019年6月、Libra用ウォレットCalibraを発表した。Libraは計画中の通貨とネットワークであり、後にNoviとなるCalibraはFacebookのウォレット事業だった。
  • 決定的瞬間通貨バスケットを使う構想は単一通貨の選択肢を経て、米国を中心とするドルのステーブルコインへ変わった。2021年5月、Diemはスイスでの申請を取り下げ、発行予定の銀行にSilvergate Bankを選んだ。
  • 歴史的結末2022年1月31日、Diemは決済網の資産を売却した。Silvergateが支払った現金5,000万ドルと1,221,217株は、当日の終値で合計1億8,200万ドルと評価された。

出来事のタイムライン

2019年6月18日身近なアプリの中の通貨

FacebookがMessenger、WhatsApp、単独アプリで使うLibraウォレットを発表し、2020年の提供を見込む。

2019年7月16日構想が上院へ

Calibra責任者David Marcusが、プライバシー、金融リスク、運営体制、規制上の承認について質問に答える。

2020年4月16日修正されたスイスでの申請

FINMAが、複数通貨トークンに単一通貨ステーブルコインを加えた設計の審査を始める。

2020年12月1日LibraからDiemへ

Facebookの更新資料にLibraのDiemへの改名が記録される。CalibraはすでにNoviになっていた。

2021年5月12日米ドルと米国の銀行

DiemがSilvergateとの提携を発表し、FINMAはスイスでの申請取り下げを確認する。

2022年1月31日技術資産を売却

Silvergateが決済網の資産を取得し、Diemは事業整理を始める計画を発表する。

通貨構想が資産売買契約になる

2022年1月31日、Silvergateはブロックチェーン決済網の知的財産と技術資産を取得したと発表した。売り手は、当初Libraと呼ばれたDiemだった。対価は現金5,000万ドルと1,221,217株。公表された総額1億8,200万ドルは、当日のSilvergate株の終値による評価額であり、全額が現金だったわけではない。[7]

買い手の説明では、ネットワークはまだ公開前の段階にあった。日常の国際決済に使う通貨として提示された構想が、正式な提供開始に至る前にインフラ資産として引き渡されたのである。売却を理解する手がかりは、変わり続けた商品設計と、その運営を認めるはずだった機関にある。[7][1]

通貨とウォレットは別の役割

Facebookは2019年6月18日、Libra用ウォレットを開発する子会社Calibraを紹介した。MessengerとWhatsApp、さらに単独のアプリで使え、2020年の提供を見込むという計画だった。LibraとCalibraはつながっていたが役割は異なる。一方は提案された通貨とネットワーク、もう一方は消費者がそこへアクセスするためのFacebookの商品だった。[1]

David Marcusは2019年7月の上院証言で、複数の通貨から成る銀行預金と短期国債の準備金を説明した。Libraの価値は、どれか一つの国の通貨に固定される設計ではなかった。安定性を目指すことは、1 Libraが1米ドルに等しいという保証ではない。値動きを抑える準備金設計の先には、民間の世界通貨が各国の通貨制度とどう共存するかという問いが残った。[2]

商品計画が公的権限と向き合う

7月16日の上院公聴会で、議員らはFacebookのデータ利用、マネーロンダリング対策、消費者保護、通貨を巡る権力についてMarcusに質問した。Marcusは独立した協会によるネットワーク運営構想を示し、金融政策は中央銀行の領域だと述べた。これは懸念に応じてプロジェクト側が示した境界であり、リスクがすでに解消されたという規制当局の判断ではなかった。[2]

Marcusは、規制上の懸念に対応し、必要な承認を得るまでFacebookはLibraを提供しないとも約束した。身近なアプリを使えば利用者に届ける手間は減らせる。しかし、誰が準備金を監督し、顧客を守り、国境をまたぐ責任を負うのかは別問題だ。公聴会は、予定された提供開始の前にその隔たりを明らかにした。[2]

設計の範囲が狭まる

2020年4月16日、FINMAは更新された設計に基づく決済システムの認可申請を受理したと公表した。複数通貨型のLibraトークンと並んで、単一通貨ステーブルコインを用意する構成だった。スイス当局は審査が始まり、結果も所要期間も未定だと説明した。申請は認可取得ではない。新設計は、すべての支払いに一つの新しいバスケット通貨を使わせるのではなく、各国通貨の選択肢を加えていた。[3]

Libraは2020年12月にDiemへ改名した。Facebookの当初の発表には12月1日付でその変更が記されている。Calibraは先に5月にNoviとなっていた。したがって改名は新通貨の公開を意味せず、ウォレットの発表もDiem決済網の一般提供を証明しない。この区別を保てば、名前の変遷を誤った開始日程として読むことを避けられる。[1]

銀行が発行するドルへ

2021年5月12日、Diemは別の運営体制を発表した。Silvergate BankがDiem USDを独占的に発行して準備金を管理し、Diem Networks USが許可型の決済網を運営する計画だった。発表は試験運用に向けた準備と位置付けられていた。役割分担の構想であって、一般の顧客がすでにDiemのドルを入手できる証拠ではない。[5]

FINMAは、すでに審査が進んでいたスイスでの申請をDiemが取り下げると別途確認した。初期の対象市場が米国に移り、設計が米ドルのステーブルコインに集中したためだという。記録が裏付けるのは、計画変更に伴う取り下げであり、スイスが最終的な不許可処分を下したという主張ではない。当初の通貨バスケットは、一国の通貨と発行銀行へと絞られていた。[4][5]

実現しなかった提供開始

2022年1月の資産売却時、DiemのCEO、Stuart Leveyは、連邦当局との対話を通じて計画を進められないことが明らかになったと述べた。これは撤退する会社が自らの判断を説明したものだ。特定の当局が公表した禁止命令に読み替えるべきではない。Diemは協会と子会社が、その後数週間で事業整理を始める見込みも発表した。[6]

この経緯は、Libraの最初の約束が直面した実務上の限界を示している。決済アプリ、準備金、金融ネットワークを運営する権限がそろわなければならなかった。通貨設計、名前、運営する法域を変えても、ネットワークは公開を待つ段階で資産売却に至った。技術を買い手へ渡すことはできたが、当初約束した一般向けの提供は実現しなかった。[1][3][4][7]

ストーリー・ユニバース

この人物・事件と繋がる関連ストーリー

歴史のバタフライ効果で結びついた、もう一つのドラマを探求する。

出典・参考文献

  1. [1]出典 1: Calibraの発表とNovi・Diemへの改名記録Facebook / Meta確認 2026-09-12
  2. [2]出典 2: 2019年7月16日の米上院公聴会とMarcusの証言U.S. Senate / Government Publishing Office確認 2026-09-12
  3. [3]出典 3: FINMAによる修正版Libraの審査開始FINMA確認 2026-09-12
  4. [4]出典 4: FINMAによるスイスでの申請取り下げ確認FINMA確認 2026-09-12
  5. [5]出典 5: DiemのSilvergate提携と米国移転計画Diem Association / PR Newswire確認 2026-09-12
  6. [6]出典 6: 資産売却に関するDiem CEOの声明Diem Association / PR Newswire確認 2026-09-12
  7. [7]出典 7: Silvergateの取得条件と公開前のネットワークSilvergate Capital Corporation確認 2026-09-12