SushiSwap:流動性の移動と、管理権限の引き渡し
2020年9月、SushiSwapはSUSHI報酬でUniswapの流動性提供者を呼び込んだ。Chef Nomiの換金、管理権限の移譲、8億ドル超の流動性移行は、預け入れを動かす報酬とプロトコルを支配する権限が別の問題であることを示した。

3点クイック要約
- 発端 / 逆説SushiSwapはUniswapの流動性トークンを預けた利用者にSUSHIを配布した。裏付けとなる資産は、移行が行われるまでUniswapに残っていた。
- 決定的瞬間2020年9月5日、Chef Nomiは開発資金の流動性ポジションを解消し、約38,011 ETHを受け取った。翌日にはSam Bankman-Friedに管理権限が移り、9月9日に流動性が移行した。
- 歴史的結末9月11日、Nomiは開発資金のウォレットへ38,000 ETHを返還した。この送金は、移行したと報じられた8億ドル超の利用者の流動性とは別のものだ。
出来事のタイムライン
SushiSwapがUniswapの流動性トークンを預ける参加者にSUSHI報酬を提供する。
SUSHI–ETHの流動性ポジションを解消し、SUSHIを交換した取引で、デプロイ元アドレスに約38,011 ETHが送られる。
当時の報道によると、Chef NomiがFTXのCEO、Sam Bankman-Friedにプロジェクトの管理権限を渡す。
The Defiantは、8億ドル超の流動性がUniswapからSushiSwapへ移ったと報じる。
Nomiが謝罪し、開発資金のウォレットに38,000 ETHが送金される。
Uniswapがガバナンストークンと、条件を満たす過去の参加者への遡及的な配布を発表する。
競合を必要とした新しい取引所
2020年8月に登場したSushiSwapの参加方法は独特だった。利用者はまずUniswapに流動性を提供し、その見返りに受け取った流動性提供者トークンをSushiSwapの報酬コントラクトに預けた。新しい取引所が、競合での活動を使って最初の参加者を集めていたのだ。当時の報道はこの手法をヴァンパイアマイニングと呼んだ。[1][3]
流動性トークンは、取引プール内の資産に対する持ち分を示す引換証のようなものだ。それをMasterChefに預けるとSUSHI報酬が得られたが、元の資産が直ちにUniswapから移動するわけではなかった。SushiSwapの報酬プログラムに参加していても、ポジションの裏付け資産はUniswapの取引を支え続ける。引換証、報酬トークン、プールの資産は、それぞれ別のものだった。[1][2]
引換証が可能にした移行
移行コードは計画の後半を担った。MasterChefが預かる流動性トークンの使用を移行コントラクトに承認すると、そのコントラクトは旧プールの持ち分を償還し、2種類の原資産を対応する新プールへ送り、新しい流動性トークンを取得した。この処理が終わって初めて、資産はSushiSwapの市場を支える。表示するウェブサイトの名前だけが変わるのではない。[1][2]
これは報酬と予定された移行処理を使うヴァンパイア攻撃であり、SushiSwapがUniswapのウォレットに侵入した証拠ではない。参加は利用者が流動性トークンを預けるところから始まった。ただし、参加を選べることと管理権限が重要でないことは別だ。当時のMasterChefコードでは、setMigratorにonlyOwnerの制限があった。その権限を持つ主体は、引換証を託す移行コントラクトを選べた。[1][2]
同じコントラクトは、devaddrに別枠の開発用トークンも発行していた。これは利用者が預ける流動性トークンとは異なる。報酬トークンが広く配布されても、重要な管理権限と開発資金は集中し得る。トークンの保有分布だけを見ていては、もう一つの力関係を見落としてしまう。[1]
9月5日、異なる資金が一つの事件になる
9月5日、Chef Nomiの換金によって、この区別が切実になった。記録された取引は約256万SUSHIと20,040 ETHを含む流動性ポジションを解消し、SUSHIを追加のETHに交換したうえで、約38,011 ETHをSushiSwapのデプロイ元アドレスへ送っている。全利用者の預け入れ資金を移した取引ではない。エクスプローラーのドル表示は相場で変わる。ここで有用なのは、当時のトークンの移動記録だ。[4]
開発用の配分を開発費だと理解していた参加者は、Nomiの売却に反発した。The Defiantは騒動と出口詐欺の疑いを報じた。この疑いはコミュニティの反応を示すもので、裁判所の判断ではない。運営上の問題は具体的だった。プロジェクトが公に掲げた約束と、創設者が開発用の配分を処分できる権限との間に、隔たりが現れた。[3][4]
9月6日には、当時FTXのCEOだったSam Bankman-Friedへの管理権限の移譲が報じられた。彼は移行を完了させ、コミュニティが選ぶマルチシグ管理へ進む計画を示した。この時点で確認できるのは、別の意思決定者への引き渡しと次の段階の計画である。すべての特権的な機能が、すでに分散化された証拠ではなかった。[5]
ETHが戻る前にプールが移る
9月9日、移行は成功した。The Defiantは、8億ドル超の流動性がUniswapからSushiSwapへ移ったと報じた。この数字は報道時の価格で評価した取引プールの資産である。SushiSwapの売上でも、Nomiへの支払いでも、開発資金の換金額でもない。[6]
9月11日、別のEthereum取引がデプロイ元アドレスから開発資金のウォレットへ、正確に38,000 ETHを送った。DecryptはNomiの公開謝罪も報じている。返還そのものはオンチェーンで独立に確認できる。ただし、この額を先の約38,011 ETHと同じ数字として扱ったり、損失を出した全トレーダーへの補償と解釈したりすることはできない。[7][8][4]
複製できるもの、信頼を得る必要があるもの
Uniswapは9月16日、ガバナンス権と条件を満たす過去の参加者への遡及的な配布を伴うUNIを発表した。公式発表が記録しているのは、このプロダクト上の変化だ。SushiSwapだけがUNI誕生の原因だったと証明するものではない。両システムがトークンの所有を通じて参加を組織できるようになり、競争には新たな軸が加わった。[9]
SushiSwapの最初の数週間は、2種類の記録を残した。コントラクトは、報酬で競合の流動性を呼び込む仕組みを説明する。送金と権限の引き渡しは、開発資金や管理機能の支配がなぜ重要なのかを示す。預け入れ資産を動かすことは技術的に可能だった。その資産を預けた人々に運営ルールを信頼してもらうには、取引所のコードを複製する以上のことが必要だった。[1][2][4][5][8]
この人物・事件と繋がる関連ストーリー
歴史のバタフライ効果で結びついた、もう一つのドラマを探求する。
出典・参考文献
- [1]出典 1: 当時のMasterChef報酬・移行コントラクトSushiSwap / GitHub確認 2026-09-12
- [2]出典 2: 当時のMigrator:旧プール持ち分の償還SushiSwap / GitHub確認 2026-09-12
- [3]出典 3: 移行前の報酬設計とNomiを巡る騒動The Defiant確認 2026-09-12
- [4]出典 4: 9月5日の換金取引Etherscan確認 2026-09-12
- [5]出典 5: 9月6日の管理権限移譲Decrypt確認 2026-09-12
- [6]出典 6: 流動性移行の完了報道The Defiant確認 2026-09-12
- [7]出典 7: Nomiの謝罪と資金返還Decrypt確認 2026-09-12
- [8]出典 8: 9月11日の38,000 ETH返還取引Blockscout確認 2026-09-12
- [9]出典 9: 2020年9月16日のUNI発表Uniswap Labs確認 2026-09-12

