創業者・誕生秘話約 5分

バンコール (BNT):3時間で40万ETHが殺到し、イーサリアム全体を麻痺させた日

オーダーブックのない初のAMMを提示したバンコールのICO。3時間で40万ETHが殺到しイーサリアム全体を麻痺させたDeFi黎明期の熱狂。

バンコール (BNT):3時間で40万ETHが殺到し、イーサリアム全体を麻痺させた日

3点クイック要約

  • 発端 / 逆説Bancorは2017年6月12日のトークン販売で1万885人の参加者と39万6720 ETH(当時の相場換算で約1億5000万ドルの調達額)を報告し、プロジェクト側が圧倒的な需要やトラフィック、攻撃と呼んだ自社ウェブサイトの障害を受けて受付時間を1時間から3時間に延長しました。
  • 決定的瞬間固定準備金比率(CRR)契約は購入時にトークンを発行し清算時に焼却する仕組みであり、ホワイトペーパーはオーダーブックを持たないこの準備金連動型メカニズムを「自動マーケットメーカーとして機能する」と表現しました。
  • 歴史的結末2018年のアップグレード用ウォレット侵害でBancorがBNTだけを凍結できると判明し、Uniswapは異なる積一定設計を採用しました。2024年9月の管轄権棄却後、Bancor DAOは被告に復帰してデフォルト登録を受け、原告は2025年5月にディスカバリーを申請しました。欠席判決でも実体判断・不正認定でもありません。

出来事のタイムライン

1940–1944ケインズが構想した実在しなかった通貨

ジョン・メイナード・ケインズとE・F・シューマッハーが超国家的な計算単位としてバンコールを考案しましたが、ブレトンウッズ会議で英国の提案は採択されませんでした。

2017年6月12日3時間に及んだ9桁規模のトークン販売

自社サイトの障害や攻撃に直面して販売期間を1時間から3時間に延長した後、Bancorは1万885人の参加者と39万6720 ETHの調達を報告しました。

2018年7月単一トークンを凍結した侵害事故

アップグレード用ウォレットの侵害により約2350万ドル相当が流出し、Bancorは盗難されたBNTを凍結したもののEtherやNPXSは凍結できませんでした。

2020年6月契約の不具合とプロジェクト側が述べた救出

v0.6の不具合後、Bancorは開発者が管理されたエクスプロイトで資産を移したと説明し、報道は利用者損失も伝えました。

2022–2025年原告の主張とディスカバリー申請

保護停止による損失の主張から始まった訴訟は、管轄権棄却後のBancor DAOの被告復帰とデフォルト登録を経て、2025年5月の原告側ディスカバリー申請に至りました。

1. 流通することのなかった通貨から借りた名前

バンコールは1940〜1942年にジョン・メイナード・ケインズとE・F・シューマッハーが国際清算同盟(ICU)の貿易決済用超国家計算単位として構想し、名は仏語「banque or」に由来します。英国がブレトンウッズ会議で提案するも不採択となり流通しませんでした。[3]

バンコール・プロトコルは、ジョン・メイナード・ケインズが1944年のブレトンウッズ会議で提案した、国際貿易の記録と均衡を図るための超国家的な通貨単位を称えて名付けられました。[2]
Bancorプロトコル ホワイトペーパー(2017年6月)

2017年4月28日の草案v0.77に続き、6月6日に草案v1.00が出ました。エヤル・ヘルツォーク、ガイ・ベナルツィ、ガリア・ベナルツィが著者として記され、スコット・モリスとベルナール・リエターが編集参加しました。裁判資料では、イスラエル拠点の創業陣がスイス非営利法人Bprotocol Foundation下で「本質的に取引可能な通貨の世界標準」を目指したとされています。[2][1][10]

設計上、スマートトークンは内部に他トークンの準備金を保持してコントラクトと直接売買でき、購入時に新規発行され清算時に破棄されます。「スマートトークンが流動性を持つために取引所で取引される必要はない」と宣言し、取引所非上場でも即座に換金できる環境を提示しました。[2]

2. Bancorが報告した39万6720 ETHとダウンした自社サイト

2017年6月12日のトークン販売で、Bancorは1万885人から39万6720 ETHの調達を発表しました。これは当時相場で約1億5000万ドル(サイト上は約1億5300万ドル)に相当し、前年のThe DAO(1億5200万ドル)を上回る規模でした。[4]

ドル換算額はEther価格基準で変動し、Finance Magnatesは1 ETH=360ドルで39万6619 ETHを1億4200万ドル超と算出、1億5300万ドルは後の高値を反映したものでした。これらは実際の販売収益金(proceeds)であり企業評価額(valuation)ではありません。[5][4]

当初1時間の販売受付は、チームが「圧倒的な需要とトラフィック、大規模な悪意ある攻撃」と呼んだ自社サイト・アプリの障害により3時間に延長されました。購入者はエラーや保留に直面しましたが、当時の記録にイーサリアム停止の記載はなく、問題はプロジェクト側のインフラでした。[4][5]

Bancorは7932万3978 BNTを発行して約半分を一般販売し(1名が2700万ドル分購入とも報道)、調達資金の20%を価格決定数式のオンチェーン担保となるEther準備金へ割り当てました。[4][2]

3. オーダーブックの代わりに準備金と比率を選んだ数学

価格は「準備金残高÷(発行済供給量×作成時固定CRR)」で決まります。CRRが100%未満の場合、購入は準備金と発行量を増やして価格を上げ、売却は焼却と準備金払出によって価格を下げます。オーダーブックの代わりに数式が市場として機能しました。[2]

トークン交換は合計CRR 100%で複数準備金を保持する「トークンチェンジャー」で行われ、交換ごとの価格変動を裁定取引で是正しました。中核ハブは「Bancorプロトコルでデプロイされた最初のスマートトークン」であり単一Ether準備金を持つBNTでした。[1][2]

ホワイトペーパー概要はコントラクトが「自動マーケットメーカーとして機能する」と記しました。これは固定ルールで継続価格を提示するというプロジェクト自身の説明です。資料は2017年春公開の数式型流動性プロトコルを裏付けますが、Bancorが最初のAMMだったことや後発設計への影響は裏付けません。[1]

Uniswap v1ホワイトペーパーは、ETHとトークンの準備金の積をスワップ中に一定に保つ仕組みを記します。取引対象資産をCRR準備金に応じて発行・焼却するのではなく、ETH・トークンプールの残高を変化させます。Bancorは準備金比率と供給量、Uniswapはx·y = kのプール残高で価格を決めました。[12][1][2]

4. アップグレード用ウォレットの侵害とBNT凍結権限

2018年7月、TechCrunch報道によるとEtherで1250万ドル、NPXSで100万ドル、自社BNTで1000万ドルの計約2350万ドル相当が流出しました。原因は数式ではなく特権的なアクセス権限の侵害でした。[6]

の一部のアップグレードに使用されていたウォレットが侵害された。[6]
TechCrunchが引用したBancorの声明

Bancorは盗難BNTを凍結したもののEtherやNPXSは凍結できず、調査のため取引所を停止しました。この対応は自社トークンへ介入できる実態を示し、Litecoin創設者チャーリー・リーはその統制を批判しました。[6]

顧客資金を失う可能性があるか、顧客資金を凍結できるなら、その取引所は分散型ではない。バンコールは両方ができる。それは分散型という誤った感覚だ。[6]
チャーリー・リー、Litecoin創設者(TechCrunchが引用した投稿)

2020年6月18日、Bancorは16日にデプロイされたBancorNetwork v0.6の脆弱性を開示しました。直近3バージョンのバグで無制限承認が付与され、1inchは誰でも承認を悪用して資金を盗める公開メソッドを指摘しました。Bancorは開発者が資産退避のため管理された攻撃を実行したと説明しましたが、これはプロジェクト側の説明であり、一部ユーザーの損失も報じられました。[8][7]

5. BancorとUniswapの設計差、そしてディスカバリー申請

Uniswap v1ホワイトペーパーは、ETHとERC-20の準備金を持つコントラクトがx·y = kを維持してスワップ価格を決めると説明します。Bancorは準備金比率に応じてトークンを発行・焼却し、Uniswapはプールの2残高を変化させました。[12][1][2]

比較した一次資料が裏付けるのは技術差だけであり、BancorがUniswapに影響したことや後継関係ではありません。記述も系譜ではなく設計比較に限定します。[12][1][2]

テキサス州連邦裁判所の訴状によると、2017年v1、2020年4月v2、同年10月に変動損失保護を導入したv2.1、2022年5月11日にv3が公開されました。原告は2022年6月19日の出金急増で保護が停止され、保護を信じた投資家が損失を被ったと主張しています。[10]

2023年5月に集団訴訟が提起され、ロバート・ピットマン判事は2024年9月6日、対人管轄権の欠如と米国内取引の主張不備を理由に財団、LocalCoin、創業者らへの請求を実体判断なく棄却しました。原告が2025年5月27日に提出した申請書によると、不服申立てに加わらなかったBancor DAOは被告に復帰し、裁判所書記官がDAOに対するデフォルトを登録しました。原告は管轄権、米国内取引、クラス認証、損害額に関するディスカバリーを求め、その後の欠席判決申立てを検討すると述べました。この申請書は当事者の要請であり、欠席判決でも実体判断・不正認定でもありません。[9][11][10]

この事件から学ぶ重要教訓(Key Takeaways)

技術 & アーキテクチャ

AMMを評価する前に数式曲線を特定せよ

Bancorの準備金比率ボンディングカーブとUniswapの積一定プールは、準備金に対する発行・焼却と2資産プール(x·y = k)という全く異なる力学で流動性を解決します。アーキテクチャの評価は、数式が明示されて初めて可能になります。

市場 & 投資インサイト

調達収益金は企業評価額ではない

2017年の販売で集められた39万6720 ETHのドル換算価値は、当日のEther相場に応じて約1億4200万ドルから1億5300万ドルの間で変動しました。ICOの見出し数値は、基準価格と対象を明確にして初めて意味を持ちます。

思想 & ガバナンス

非常時権限が分散化の境界を定義する

2018年の対応はBancorが自社トークンを凍結できることを示しましたが、報道は防げた損害額を確定していません。これとは別に、2022年の変動損失保護停止は原告の主張として訴訟で扱われました。両事件はプロトコルが持つべき非常時権限を問いかけます。

ストーリー・ユニバース

この人物・事件と繋がる関連ストーリー

歴史のバタフライ効果で結びついた、もう一つのドラマを探求する。

出典・参考文献

  1. [1]出典 1: Bancorプロトコル ホワイトペーパー(草案 v0.77、2017年4月28日)Bancor(公式資料サイト) · 2017-04-28確認 2026-08-24
  2. [2]出典 2: Bancorホワイトペーパー(草案バージョン 1.00、2017年6月6日)Bancor protocol(bernard-lietaer.org掲載PDF) · 2017-06-06確認 2026-08-24
  3. [3]出典 3: バンコール — ケインズが提案した超国家通貨Wikipedia確認 2026-08-24
  4. [4]出典 4: Bancor、1億5000万ドル以上を調達してICO記録を更新SiliconANGLE · 2017-06-13確認 2026-08-24
  5. [5]出典 5: Bancorクラウドセール、3時間未満で1億4000万ドル以上を調達Finance Magnates · 2017-06-12確認 2026-08-24
  6. [6]出典 6: 暗号資産業界の最新ハッキングでBancorが2350万ドルを喪失TechCrunch · 2018-07-10確認 2026-08-24
  7. [7]出典 7: 2020年Bancor Networkハッキング事後分析1inch Network · 2020-06-18確認 2026-08-24
  8. [8]出典 8: 脆弱性発見後にBancorユーザーの資金喪失が報告されるFinance Magnates · 2020-06-18確認 2026-08-24
  9. [9]出典 9: 報告および勧告採択命令、Basic v. BProtocol Foundation, No. 1:23-CV-533-RP (W.D. Tex.)米国テキサス州西部地区連邦地方裁判所(GovInfo経由) · 2024-09-06確認 2026-08-24
  10. [10]出典 10: 報告および勧告、Basic v. BProtocol Foundation, No. 1:23-cv-00533 (W.D. Tex.)Midpage(裁判文書ミラー) · 2024-07-31確認 2026-08-24
  11. [11]出典 11: 原告のディスカバリー許可申請書、Basic v. BProtocol Foundation、ECF No. 81米国テキサス州西部地区連邦地方裁判所への原告提出文書(公開コピー) · 2025-05-27確認 2026-08-24
  12. [12]出典 12: Uniswap v1ホワイトペーパーUniswap(ヘイデン・アダムズ)確認 2026-08-24