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5分でゼロへ急転落 — イカゲーム・トークンのハニーポットとDeFi詐欺の全貌

Netflixの世界的大ヒットドラマに便乗し、わずか数日で数万倍に暴騰したSQUIDトークン。「買えるが売れない」悪意のハニーポットコードが仕掛けられ、開発者が資金を持ち逃げしたラグプルの決定版。

5分でゼロへ急転落 — イカゲーム・トークンのハニーポットとDeFi詐欺の全貌

3点クイック要約

  • 発端 / 逆説2021年10月、Netflixドラマ『イカゲーム』の人気に便乗した無認可トークン『SQUID』がBSC上でローンチされ、数日で3万倍以上の天文学的暴騰を記録。
  • 決定的瞬間スマートコントラクトに「購入は可能だが、売却には開発者が管理する別トークンが必要」という悪意ある売却制限(ハニーポット)が仕組まれていた。
  • 歴史的結末2021年11月1日、価格が2,861ドルに達した瞬間、開発者が流動性プールから約338万ドルのBNBを一挙に引き抜いて逃亡(ラグプル)、価格は一瞬で99.999%暴落した。

出来事のタイムライン

2021年10月26日SQUIDトークン公開

ドラマのゲームに参加して賞金を獲得できる『Play-to-Earn』ゲームを騙り、BSC(BNBチェーン)上で取引開始。

2021年10月29日大手メディアの無批判報道

BBC、CNBCなどが「数千パーセント高騰した新星ミームコイン」として大々的に報道し、一般投資家の買いが殺到。

2021年11月1日 09:35 UTC2,861ドルの頂点とラグプル

価格が2,861ドルに達した直後、開発者が流動性を引き抜き、数分で0.0007ドルへ99.999%暴落。

2021年11月1日 直後Telegramでの逃亡宣言

公式Telegramで「ハッカーの攻撃を受けたためプロジェクトを閉鎖する」と言い残し、SNSやウェブサイトをすべて閉鎖して消滅。

1. 世界的ヒットドラマの熱狂に乗じた登場

2021年秋、Netflixで配信された韓国ドラマ『イカゲーム(Squid Game)』は世界94か国で視聴ランキング1位を獲得し、空前の社会現象を巻き起こしていた。世界中がデスゲームのドラマに熱狂する中、暗号資産のDeFi市場にもその波が押し寄せた。

2021年10月26日、バイナンス・スマートチェーン(BSC、現BNB Chain)上に『SQUID』というトークンが彗星のごとく登場した。開発チームは「ドラマを模したオンラインサバイバルゲームに参加し、勝ち残れば巨額の賞金プールを獲得できるPlay-to-Earn(P2E)プラットフォーム」を謳っていた。

0.01ドルで始まったSQUIDの価格は、ドラマの圧倒的な知名度とソーシャルメディアの拡散力によって、わずか24時間で数十倍、数日後には数千倍へと異常なペースで急上昇を始めた。

2. 「誰も売っていない」異常なチャートの正体

価格チャートは文字通り垂直に上昇し続けた。しかし、オンチェーンデータを注意深く観察していたごく一部の暗号技術者たちは、背筋が凍るような異常事態に気づいていた。DEX(分散型取引所)PancakeSwapの取引履歴には「買い注文(BUY)」が何万件も並んでいるにもかかわらず、「売り注文(SELL)」が1件も存在しなかったのだ。

SQUIDのスマートコントラクトの内部には、悪名高い「ハニーポット(Honeypot)」トラップが仕組まれていた。ホワイトペーパーには「反ダンピング機構」というもっともらしい名目で、「売却するには、開発者が別に販売する高額なマーブルトークン(Marbles)を保有していなければならない」という制約が隠されていた。

「コインを買うことは誰でもできる。しかし、売却ボタンを押した瞬間にトランザクションはエラーになる。我々の金は、開発者だけが開けられる一方通行の金庫に閉じ込められたんだ」

さらに罪深いことに、BBCやCNBC、Business Insiderといった大手主流メディアが、コントラクトの検証も行わずに「イカゲーム暗号資産が数千%の暴騰」とセンセーショナルに報道したことで、何も知らない一般投資家が雪崩を打って買いに走った。

3. 2,861ドルからの垂直落下:5分間の地獄

2021年11月1日午前9時35分(UTC)、SQUIDの価格は狂乱の極みに達し、1トークン=「2,861ドル(約33万円)」という天文学的な値をつけた。時価総額は名目上、数十億ドルに達していた。

そしてその数分後、悪夢の引き金が引かれた。開発者は自らの特権アクセスを使い、PancakeSwapの流動性プールから投資家が預けたすべてのBNB(約338万ドル、当時のレートで約3億8,000万円相当)を一瞬にして引き抜いた(ラグプル)。

買い支えを失ったSQUIDの価格は、2,861ドルから「0.0007ドル」へと文字通り垂直に崩落した。わずか5分間で99.9999%の価値が消滅した瞬間だった。

「Twitchでライブ配信していたストリーマーが、画面の前で数万ドルの残高が一瞬で0ドルになるのを目撃し、絶叫して頭を抱える動画が瞬く間に世界中に拡散された」

4. Telegramでの冷酷な別れと資金洗浄

流動性を奪い去った直後、開発チームは公式Telegramチャンネルに冷淡なメッセージを投稿した。

「何者かが私たちのコントラクトをハッキングしようとしたため、プロジェクトを閉鎖せざるを得なくなりました。私たちは開発のプレッシャーで疲れ果てました。皆さん、詐欺師には気をつけてください」
SQUID公式Telegramメッセージ

この投稿を最後に、ウェブサイト、Twitterアカウント、Medium、Telegramグループはすべて即座に削除された。奪われた資金はプライキシーミキサー「Tornado Cash」へと送金され、追跡を逃れるように洗浄されて消え去った。

5. DeFiの自由が突きつける自己責任の現実

イカゲーム・トークンのラグプルは、DeFiブームの最悪の暗部を象徴する事件として歴史に刻まれた。中央集権的な審査機関が存在せず、誰でも数分でトークンを発行できるパーミッションレス(無許可型)の世界では、投資家を守る警察も返金窓口も存在しない。

人気コンテンツや流行のミームに便乗したトークンの大半は、技術的価値を持たない投機的な罠である。「スマートコントラクトを自分で読めないなら、大金を投じるな」。SQUIDの悲劇は、分散型金融の自由を享受するために必要なリテラシーの重みを、あまりにも残酷な形で世界に知らしめた。

この事件から学ぶ重要教訓(Key Takeaways)

技術 & アーキテクチャ

ハニーポット(売却制限)のスマートコントラクト検証

DEXで取引する際、誰も売却していない(買い注文しかない)チャートは典型的なハニーポットの警告サインです。Token SnifferやBSCScanでのコード確認が不可欠です。

市場 & 投資インサイト

大手メディアの無知とFOMOの危険性

大手ニュースメディアが報じたからといって安全とは限りません。技術的裏付けのないメディアの煽り報道は、詐欺への参加者を爆発的に増やす触媒になります。

思想 & ガバナンス

非許可型(パーミッションレス)DEXの光と影

誰でも自由にトークンを発行・上場できるDeFiの利便性は、同時に悪意ある詐欺師にとって審査なしで罠を仕掛けられる温床でもあります。

出典・参考文献

  1. 出典 1: BBC News: Squid Game cryptocurrency collapses in apparent scamBBC News · 2021-11-02
  2. 出典 2: CNBC: Squid Game crypto token collapses to $0 after apparent scamCNBC · 2021-11-01
  3. 出典 3: CoinMarketCap: SQUID Rug Pull AnalysisCoinMarketCap · 2021-11-03