Wormholeの3億2,000万ドル流出:JumpによるETH補填と裁判所命令による回収
2022年2月、攻撃者はWormholeで裏付けのないラップドETHを12万枚発行した。JumpがETHを補填し、翌年にはOasisが裁判所命令に基づく資産回収に協力した。その過程で管理権限の存在も浮かび上がった。

要点
- Solana側の検証不備により、対応する預け入れなしにラップドETHが12万枚発行された。当時の評価額は約3億2,000万ドルだった。
- Jumpは2022年2月3日、12万ETHを補填したと発表した。裏付けの不足への対応であり、Solanaの分散型金融全体の崩壊は確定した結果ではなく懸念だった。
- Oasisは2023年2月の裁判所命令に基づく資産回収を確認した。Wormholeは後にZK計画を発表し、2024年にWを開始したが、Guardianによる検証の廃止が証明されたわけではない。
出来事のタイムライン
検証不備により、対応する預け入れなしにSolana上でラップドETHが12万枚発行された。
JumpはWormholeと利用者を支えるため、12万ETHを補填したと公表した。
Immunefiは、2月24日に報告・修正されたEthereum側の別の不具合に1,000万ドルが支払われたと発表した。
Oasisは複数署名の仕組みと裁判所が承認した第三者を通じ、攻撃者のウォレットに関連する資産を回収したと説明した。
1月31日にZK計画を公表し、4月3日にWを開始。検証技術と運営参加に関する別々の節目となった。
1. 実在しなかった預け入れ
Wormholeのブリッジは、Ethereumに預けた資産とSolanaで使うラップドトークンを結び付けていた。移転先で発行するトークンには、移転元に預けた資産が対応するはずだった。2022年2月2日、攻撃者はこの対応を崩し、ETHを預けずにラップドETHを12万枚発行した。裏付け不足の当時の評価額は約3億2,000万ドルに達した。[1][2]
Kudelskiの技術分析は、Solana側の契約による命令データの扱いに原因を見いだした。load_instruction_at関数は、入力が本物の命令システム変数アカウントかどうかを確認していなかった。このため、偽のデータが検証経路を通過できた。承認を示すはずのデータを誤って受け入れたのであり、攻撃者がGuardianの秘密鍵を入手したり、全員に署名させたりした証拠ではない。[1]
Chainalysisは93,750ETHがEthereumへ移され、残りのラップドトークンはSolana上で別の資産に交換されたと報告した。この移転量と、裏付けなしに発行された12万枚は異なる。攻撃が生んだのはチェーンをまたぐ資産の裏付け不足であり、Solana上のあらゆるETH関連トークンが無価値になったという話ではない。[2]
2. 回収に先立つETHの補填
直ちに解決すべき問題は裏付けの不足だった。Chainalysisは、売り圧力や担保価値の問題が接続先の仕組みに広がる危険を説明した。それはリスクの分析であり、すべての貸出市場で清算が目前だったという証拠ではない。不足資産を補うことは、ブリッジが直面する問題への直接の対応だった。不足を放置した場合の広い影響については、不確実さが残っていた。[2]
2月3日、Jump CryptoはWormholeと利用者を支えるため12万ETHを補填したと公表した。発表が示すのはETHであり、3億2,000万ドルの銀行送金ではない。ドル額は当時の被害規模の概算だ。攻撃者が資産を保持したままでも、補填によって裏付けを回復させることはできる。補填と回収は別の出来事だった。[6]
Wormholeは資金返還に対する1,000万ドルの報奨金も提示した。Chainalysisはその提案と、後の再提示を記録している。善意のセキュリティ研究者として扱う合意案があっても、公的機関による刑事免責の付与を示すものではない。当初の分析によれば、この提案は資金返還につながらなかった。ETHの補填と攻撃者の追跡は、それぞれ別の道を進むことになった。[2][5]
3. 資産保管契約と裁判所命令
翌年、舞台はOasisの自動化された資産保管契約へ移った。Oasisによると、2023年2月16日にホワイトハットの集団から管理構造の脆弱性が報告された。続く2月21日には、攻撃者のウォレットに関連する特定資産を回収するよう、イングランド・ウェールズ高等法院から命令を受けた。発表は報告者や裁判所が承認した第三者をJumpとは名指ししていない。[4]
Oasisは、複数署名の仕組みと裁判所が承認した第三者で回収を実行し、資産を直ちにその第三者が管理するウォレットへ送ったと確認した。同時期のBlockworksの分析は取引の動きからJumpの関与を推測したが、ウォレットの所有は未確認だと明記した。公開記録では回収の実行は確認される一方、作業の一部を担った主体の身元は未確認のまま残る。[4][5]
Blockworksは債務返済を差し引いた回収額を約1億4,000万ドルと推計した。分析に登場するのは約2億1,800万ドルの担保と、借入返済に使われた8,000万DAIである。1億2,000万DAIを新たに回収したという意味ではない。Oasis自身の発表は回収を確認するが評価額を示していない。この事例は管理権限の作用を示すものの、史上初の法的先例だとまでは立証しない。[4][5]
4. 脆弱性の修正、投資、そしてW
セキュリティ改善にも別の時間軸があった。Immunefiは2022年5月20日、2月24日に報告され同日修正されたEthereumのプロキシの不具合について、satya0xに1,000万ドルが支払われたと公表した。Solanaへの攻撃とは別の脆弱性だ。確認できるのは具体的な修正と報奨金であり、検証網全体が既にゼロ知識証明へ置き換わっていたという事実ではない。[7]
Multicoin Capitalは2024年4月3日、共同主導した2億2,500万ドルの投資ラウンドが2023年末に完了し、発表当日にWが開始されると説明した。攻撃後も開発を続けていたプロジェクトに、新たな資本が入ったことになる。資金調達とトークン開始はそれぞれの節目だが、回収が投資を引き起こしたことや、全権限の分散化が完了したことまでは意味しない。[9]
Wormholeの2024年1月31日の計画は、ZK検証を追加の選択肢として示した。文書は当時、Guardian19組織のうち最低13組織の同意が必要だと説明し、軽量な検証プログラムの今後の統合を予告した。2022年5月に移行済みだったという根拠ではない。この事件には資本の補填、管理権限による回収、検証技術の開発という異なる対応があり、開発計画と実際の導入は分けて捉える必要がある。[8][9]
この事件から学ぶ重要教訓(Key Takeaways)
メッセージの形式だけでは足りない
ブリッジには、想定した検証主体による承認かを確認する仕組みが必要だ。偽の検証データを受け入れると、預け入れと発行の対応が崩れる。
裏付けの回復には資産が必要
Jumpの補填はETHの不足を埋めた。ただし、介入がなければ起きたはずの清算をすべて立証するものではない。
回収にも権限が働く
Oasisの回収には管理権限と裁判所命令が使われた。利用者にとっては、契約変更や自動化の権限の範囲も重要となる。
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出典・参考文献
- [1]出典 1: Wormhole攻撃の技術分析Kudelski Security
- [2]出典 2: Wormhole攻撃とリスク波及の分析Chainalysis
- [3]出典 3: Jumpによる流出資産の補填に関する報道Bloomberg
- [4]出典 4: 裁判所命令による回収についてのOasisの声明Summer.fi
- [5]出典 5: 回収と関与主体の不確実性に関するBlockworksの分析Blockworks
- [6]出典 6: 12万ETHの補填を確認したJumpの発表Jump Crypto · 2022-02-03
- [7]出典 7: 別のEthereumプロキシの修正と報奨金の公表Immunefi · 2022-05-20
- [8]出典 8: ZK計画と既存のGuardian検証の説明Wormhole · 2024-01-31
- [9]出典 9: 投資ラウンドとW開始を確認した投資家の発表Multicoin Capital · 2024-04-03


