KarmaからTeam Rocketへ:Avalancheを生んだ三つの研究
2003年の資源共有の論文から、2018年の匿名の合意方式の提案へ。エミン・ギュン・シラーの研究は、報酬の仕組み、マイニング、分散合意を経て、2020年に稼働したAvalancheへとつながった。

3点クイック要約
- 発端 / 逆説2003年6月、Vivek Vishnumurthy、Sangeeth Chandrakumar、エミン・ギュン・シラーは、P2Pの資源共有を支える会計の仕組みKarmaを発表した。
- 決定的瞬間2013年11月、イタイ・エヤルとシラーは、一定の条件下で利己的マイニングを行うプールが計算能力の割合を上回る報酬を得られると分析した。
- 歴史的結末2018年のTeam Rocketの提案とコーネル大学での研究はAvalancheの開発につながり、メインネットは2020年9月に稼働した。
出来事のタイムライン
Vishnumurthy、Chandrakumar、シラーがP2P資源の分散会計の仕組みを発表した。
エヤルとシラーが、ブロックの公開を戦略的に遅らせて報酬を増やす手法を分析した。
準安定的な合意プロトコル群を提案する匿名の論文がIPFSを通じて出回った。
シラー、ケビン・セクニキ、テッド・インが研究をブロックチェーンの開発へ進めた。
開始の告知は1秒未満の取引確定と、独自の検証者集合を持つチェーンを紹介した。
1. Bitcoin以前、貢献を記録したKarma
2003年6月、Vivek Vishnumurthy、Sangeeth Chandrakumar、エミン・ギュン・シラーは、P2Pシステムの経済学を扱うワークショップでKarmaを発表した。Bitcoinのホワイトペーパーが公開された2008年より5年前のことだ。資源を使うだけの参加者がいるネットワークで、提供する側の貢献にどう報いるかが論文の問いだった。[1][4]
Karmaでは、資源を提供すると残高が増え、消費すると減る。bank-setと呼ばれるノードの集団が口座を管理し、分散ハッシュテーブルがシステムの状態を整理した。資源のやり取りを記録するための具体的な設計だった。[4]
後の暗号資産研究との接点は、参加を促す仕組みにある。誰が貢献し、誰が交換を記録し、規則の悪用をどう防ぐのか。Karmaは、こうした問いに経済的な仕組みと分散処理を組み合わせて取り組んだ。[4]
2. 利己的マイニングが問う報酬の仕組み
2013年11月、イタイ・エヤルとシラーは「Majority is not Enough: Bitcoin Mining is Vulnerable」を公開した。採掘したブロックをすぐには知らせず、戦略的なタイミングで公開することで、プールが自らの計算能力の割合を超える報酬を狙う手法を分析した論文だ。[5]
このモデルでは、競合する正直なマイナーが利己的なプールの分岐を選ばない場合、収益上有利になる境界は計算能力の3分の1だった。半数がその分岐を選ぶ場合は4分の1となる。よく引用される約33%と25%は、こうした条件付きの数字であり、あらゆる状況でネットワークを支配できる基準ではない。[5]
論文は、収益性の高い利己的なプールに他のマイナーが加わる誘因も指摘した。その仮定の下では、採掘の集中へ向かう経路が生じる。これはモデルが示した弱点であり、Bitcoinがすでに一つのプールに支配されたという出来事の記録ではない。[5]
3. Team Rocketと繰り返し抽出する標本
2018年5月、Team Rocketの名で「Snowflake to Avalanche: A Novel Metastable Consensus Protocol Family for Cryptocurrencies」という論文がIPFSを通じて出回った。コーネル大学の記録は、この提案を、当時シラー、ケビン・セクニキ、マオファン・「テッド」・インが進めていた研究と結び付けている。[3][10]
特徴は、合意のための通信を組み立て直した点にある。すべての検証者が互いに投票を送り合う代わりに、ノードは少数の相手を抽出して繰り返し意見を尋ねる。スタジアムで何人かの観客に好みを聞き、また別の相手に聞く様子を思い浮かべるとよい。繰り返し観測される選択が共通の傾向を強めるという比喩であり、実際の処理速度を測った例ではない。[6]
公式文書の例では、ノードは20の検証者を抽出する。受理には、設定された投票数や信頼度の基準を満たす必要がある。安全性はプロトコルの仮定の下で確率的に説明される。パラメーターを調整すれば、正直な検証者同士が矛盾する判断をする確率を極めて小さくできるが、無限の処理能力や失敗確率ゼロ、どの環境でも同じ確定時間を意味するわけではない。[6]
4. 論文から稼働するネットワークへ
シラー、ケビン・セクニキ、テッド・インは、プラットフォームの開発に向けてAva Labsを設立した。2020年8月のコーネル大学の記事が伝えるのは、匿名の提案と研究者たちの仕事が合流し、稼働するソフトウェアへ進む過程だ。[3][12]
Avalancheのメインネットは2020年9月に稼働した。X-Chainは資産の交換、P-Chainはプラットフォームの調整、EVM互換のC-Chainはスマートコントラクトの実行を担う。開始の告知では、取引の確定にかかる時間を1秒未満と紹介していた。秒を単位とする性能の説明であり、1ミリ秒未満という意味でも、あらゆる条件下での保証でもない。[7][6][11]
独自の検証者集合や仮想マシンを使うチェーンを可能にしたのがSubnetだった。従来、その検証者はPrimary Networkも検証する必要があったが、参加者の重なりがSubnetの安全性をPrimary Network全体に委ねることを意味したわけではない。ACP-77はSubnetが自ら安全性とデータ可用性を提供すると明記する。Etna以降のAvalanche L1検証者は、Primary Networkを検証せずに稼働できる。[7][8][9]
5. 研究が残した問い
2003年のKarma、2013年の利己的マイニング研究、2018年のTeam Rocketの論文、2020年のメインネット稼働。この順序は資料でたどれる。研究の焦点は資源の会計から経済的な誘因へ、そして合意の仕組みへと移った。関連する課題ではあっても、同じ発明を別の名前で呼んだわけではない。[1][5][3][7]
その違いを残すと、Avalancheの出発点が見えやすくなる。魅力的な合意のアイデアにも、実装と明示された安全性の仮定、実際に運用する検証者が必要だ。[6][8]
この事件から学ぶ重要教訓(Key Takeaways)
繰り返しの標本抽出にも条件がある
少数への問い合わせを繰り返すことで、大きなネットワークの合意を支えられる。安全性にはパラメーター、検証者の行動、プロトコルの仮定が関わる。
論文には実装が必要だ
Ava Labsは研究を稼働するプラットフォームへ進めた。技術的な可能性と継続的な利用の広がりは、別々に問う必要がある。
批判も設計の一部になる
利己的マイニングの論文は、暗号技術と同様に、経済的な誘因も精査すべき理由を示している。
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出典・参考文献
- [1]出典 1: コーネル大学:エミン・ギュン・シラーの研究一覧Cornell University Department of Computer Science · 2020-09-21
- [2]出典 2: Avalancheの歴史と合意方式Wikimedia Foundation · 2024-02-15
- [3]出典 3: コーネル・クロニクル:Avalanche初の公開トークン販売Cornell Chronicle · 2020-08-04
- [4]出典 4: Karma:資源共有に関する原論文Cornell University
- [5]出典 5: 利己的マイニング:エヤルとシラーの原論文Ittay Eyal and Emin Gün Sirer / arXiv
- [6]出典 6: Avalanche:反復抽出と確率的安全性Avalanche Builder Hub
- [7]出典 7: Avalancheメインネット開始の告知Avalanche
- [8]出典 8: ACP-77:SubnetとL1の安全性の範囲Avalanche Builder Hub
- [9]出典 9: Etna:独立したAvalanche L1ネットワークAvalanche Builder Hub
- [10]出典 10: コーネル大学の学位論文:Team Rocket論文の書誌情報Cornell University
- [11]出典 11: Avalanche:X・P・Cチェーンの役割Avalanche Builder Hub
- [12]出典 12: AWS:Ava Labsの設立とAvalancheの開発AWS Startups


