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三つのトークンと四つの制御室が動かす、一つのバリデータープール

Lidoの報酬報告は、Lidoという名に結び付くすべてのトークンを増やすわけではない。stETHの残高を更新し、枚数が固定されたwstETHでは1枚当たりのstETH価値を変える一方、LDOは投票力のまま残る。では、その三つをつなぐ仕組みを変更できるのは誰なのか。

出発点で分かれた、動く残高と意思決定の一票

Lidoは2020年12月、EthereumのBeacon Chainで行うバリデーションへ共同で参加する経路として始まった。利用者は32 ETHのバリデーターを自ら運用する代わりにstETHを受け取る。stETHはプールされたETHの持ち分を表し、オラクル報告が報酬、罰則、手数料を会計へ反映するたびに残高が変わる。

wstETHは、残高の自動増減を扱えないシステムでも同じ経済的持ち分を利用できるよう包み直したものだ。ウォレット内の枚数は変わらず、1枚と交換できるstETHの量が増減する。別のバリデーター残高でも、同じプールに対する二重の請求権でもない。

LDOは二つの証票とは別にある。DAO発足時に10億枚が発行され、現在のエクスプローラーにも同じ総供給量が記録されている。投票に拠出したLDOに比例して投票力が生じる一方、検証済みMiniMeトークンは権限付き発行関数を持つAragon TokenManagerに管理されている。したがって10億枚は発足時と現在の供給量であり、不変の上限ではない。LDOはETH出金待ち行列に入らず、プロトコル報酬も自動的には受け取らない。

偏りのある10億票の初期配分に、DAO財務という買い手が加わった

2021年の初期配分では、DAO財務が36.32%、投資家が22.18%、バリデーターと署名者が6.5%、初期開発者が20%、創業者と将来の従業員が15%を占めた。この数字が示すのは発足時の配分と権利確定条件であり、現在の保有アドレスではない。その後の移転や財務施策を経た今の集中度は、オンチェーンデータで改めて測る必要がある。

2026年8月、NESTによって新しい財務経路が加わった。DAOが定める条件を満たすと、プロトコルの余剰収入でLDOを購入し、開始時のTreasuryモードでは取得したトークンをDAO財務へ送る。財務の保有量や市場需要には影響し得るが、各ウォレットへの収益分配でも、購入分の全量焼却でも、価格の下支え保証でもない。

流動性のある証票を、申請・確定・請求の出口へ変えたV2

Lido V2は2023-05-15、Staking Routerとプロトコル内出金を稼働させた。保有者はstETHまたはwstETHを先着順のWithdrawalQueueに預け、譲渡可能なunstETH NFTを受け取る。申請は取り消せない。必要なETHが確保され、オラクル報告で確定すると、NFT保有者がETHを請求し、その待機権は焼却される。

確定までの時間は、プロトコル内の流動性、バリデーターの退出、Ethereum側の待ち行列に左右される。罰則やスラッシングが起きれば、申請時の予想を下回る交換率で確定する可能性があり、待機中の持ち分には正のステーキング報酬が付かなくなる。市場での売却が速いのは、別の買い手がトークンと価格のリスクを引き受けるからにすぎない。

CoreのルーティングとV3のVaultは併存する。Staking Routerは集約預け入れを登録モジュールへ配分し、各stVault所有者は自分の運営者と設定を選ぶ。Hash Consensusが委員会報告を集め、AccountingOracleが会計と出金確定を適用し、ValidatorsExitBusOracleがバリデーター退出要求を報告する。VaultHubとDAO設定の上限が、外部持ち分を同じstETH供給へ結び付ける。

2026年1月30日、Lido V3が二つ目の経路を加えた。stVaultは分別された過剰担保ETHを保有し、VaultHubを通じて外部stETH持ち分を発行できる。Vault所有者は運営者、手数料、リスク設定を選び、自分のVaultの発行、返済、預け入れ、退出を管理する。ただしCore預け入れの管理権や一般的なLDO投票権は得ない。

Easy Trackは定型判断を速め、Dual Governanceは危険な判断を遅らせた

LDO投票は手数料を設定し、モジュールを導入し、システム更新と財務方針を承認する。Easy Trackは用途を限定した実行モジュールで、事前承認済みの定型操作を処理する。認可された主体が提案を開始し、LDO総供給量の0.5%に達する反対がなければ72時間後から実行できる。その待機期間が終わっても、実行前なら反対を表明できる。投票負担を減らす一方、保有者が提案を継続して確認することが安全性の条件となる。

2025年7月に稼働したDual Governanceは、ステーカーの反対を実行手順に組み込んだ。stETH、wstETH、unstETHの保有者が持ち分を預託し、支持が増えると待機時間が延び、さらに高い段階では問題の提案が実行される前に離脱へ進める。これは実行を遅らせて退出するための権利であり、stETHでLDOの設定変更に一票を投じる制度ではない。

緊急担当者がブレーキを握り、DAOが改修の鍵を保つ

Lidoの中核はDAO Agentが管理者に設定された更新可能なプロキシを使う。DAOはガバナンスを通じて実装と特権的役割を変更できる。V3ではVaultHubと外部持ち分の上限が加わった。Vault所有者は自分のVault経路を管理するが、共通プロトコルの上限、切断、更新はDAO管理下にある。

緊急時の役割は、より狭く定められている。CircuitBreaker委員会は指定コントラクトを一度だけ、限られた期間停止できるが、その役割だけで再開や資金管理はできない。Deposit Security参加者は、不正な預け入れ情報が現れた場合に新規預け入れを止められる。Dual Governanceの緊急マルチシグも、指定された障害経路だけを扱う。すべてを一人の管理者のようにまとめて捉えると、異なる定足数、制限、対応手順を見失う。

プロジェクトが変化してきた過程

  1. 2020-12
    Ethereum共同ステーキングを開始

    預け手へのstETH発行が始まり、選定された運営者がバリデーターを稼働させる。

  2. 2021-01-05
    LDOの初期配分を公表

    10億枚のガバナンストークンと、五つの区分からなる発足時配分が示される。

  3. 2023-05-15
    V2でプロトコル内出金を実現

    オンチェーン投票を経て、WithdrawalQueueとStaking Routerが稼働する。

  4. 2024-10-25
    Community Staking Moduleを開始

    担保を伴う許可不要の参加経路が開き、ノード運営者の裾野が広がり始める。

  5. 2025-07
    Dual Governanceが稼働

    ステーキング側の資産に、提案実行を遅らせて退出するための保護策が加わる。

  6. 2025-10-02
    CSM v2が稼働

    許可不要モジュールの受入枠とノード運営者の区分が拡張される。

  7. 2026-01-30
    Lido V3とstVaultがメインネットで稼働

    Vault所有者は、VaultHubとDAO設定の上限内で、設定可能なステーキングと外部stETH発行を利用できるようになった。

  8. 2026-08-14
    NESTがTreasuryモードで始動

    規則に基づく余剰資金の運用により、DAO財務向けのLDO購入が始まる。

根拠と一次資料

最終根拠確認日: 2026-09-05

Lido DAOとはどんなコイン?

現在のLidoには二つのステーキング経路がある。CoreはETHを集約して残高が増減するstETHを発行し、Lido V3のstVaultは過剰担保された個別のETHを基に外部stETH持ち分を発行できる。Vault所有者はプロトコルの制限内で運営者と設定を選ぶ。wstETHは同じstETH持ち分を保有枚数が固定された形に包む。別トークンであるLDOが直接与えるのは投票力であり、バリデーター、預けたETH、ステーキング収益の所有権ではない。

どんな課題を解決する?

リキッドステーキングでは、作業、残高計算、意思決定を別々の主体が担う。Coreではノード運営者がバリデーターを動かし、オラクル参加者がプール残高を報告し、報酬と罰則の影響はstETH保有者に及ぶ。Coreで公表される基本手数料はステーキング報酬の10%で、運営者とDAO財務に配分され、DAOが変更できる。stVaultはVaultごとに別の手数料設計を選べる。LDO保有者は設定値や更新を決められるが、保有するだけでこれらの収入やstETHの出金経路を得るわけではない。

どのような技術と仕組みで動く?

Coreへの預け入れは内部stETH持ち分を作り、オラクル報告が報酬、罰則、手数料を反映して残高を更新する。V3のstVaultは、過剰担保されたVault内ETHを基にVaultHubを通じて外部stETH持ち分を発行できる。Vault所有者は自分の運営者と設定を決めるが、DAOが定める外部持ち分の上限と管理権限が共通のstETHを制約する。wstETHは枚数を固定し、stETHへの交換比率を変える。Coreからの出金は譲渡可能なunstETH NFTで表される先着順の待ち行列を通る。変更はLDO投票とEasy Trackで実行され、Dual Governanceが遅延させ得る。

重要ファクトの要約

  • stETHはプール全体のステーキング持ち分に合わせて残高が増減する。wstETHは枚数が変わらず、stETHへの交換比率が変化する。
  • 発足時に10億LDOが発行され、現在のエクスプローラーも総供給10億枚を示す。比例投票力を与える一方、検証済み管理コードには権限付き追加発行経路があるため、不変の上限ではない。
  • 2021年に公表された配分は、DAO財務が36.32%、投資家、バリデーター・署名者、開発者、創業者・将来の従業員の合計が63.68%だった。
  • 出金は先着順で申請、確定、請求の三段階をたどり、その待機中の権利は譲渡可能なunstETH NFTで表される。
  • Staking RouterはCoreの預け入れを配分し、ノード運営者が検証を担う。Hash Consensusが報告を集約し、AccountingOracleが残高と出金を確定し、ValidatorsExitBusOracleがバリデーター退出要求を伝える。
  • 2026年1月30日以降、stVaultは過剰担保されたVault内ETHを基に外部stETH持ち分を発行できる。Vault所有者は運営者と設定を選ぶが、Lido全体の更新権限は得ない。
  • Coreで公表される基本手数料はステーキング報酬の10%で、ノード運営者とDAO財務に配分される。DAO投票で変更でき、個別のstVaultは異なる手数料設計を採用できる。
  • Easy Trackの承認済み定型提案は、LDO総供給量の0.5%に達する反対がなければ72時間後から実行できる。72時間を過ぎても、実行前なら反対を表明できる。
  • Dual GovernanceはstETH側の資産に実行延期と離脱の経路を与えるが、LDOと同じ投票力を与える制度ではない。
  • DAO Agentがプロトコルのプロキシを管理し、DAO設定の上限が外部stETH持ち分を制限する。CircuitBreakerとDeposit Securityの役割は、より限定された緊急停止権限だけを持つ。
  • NESTは2026年8月にTreasuryモードで始動した。DAO財務による買い戻しであり、保有者への配当や価格保証ではない。

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よくある質問(FAQ)

LDOを持つとLidoのステーキング報酬を受け取れますか?

受け取れない。プール型ステーキングの損益を反映するのはstETHとwstETHだ。LDOが与えるのは運営上の投票力であり、保有するだけでバリデーター報酬を得たり、ETHと交換したりはできない。

Lidoのステーキング手数料はどこへ配分されますか?

Coreの公表モデルではステーキング報酬の10%をノード運営者とDAO財務へ配分する。stVaultは独自の手数料設計を採用できる。DAO設定は変更可能で、どちらの経路も全LDO保有者へ自動的に支払うものではない。

どのノード運営者にETHを割り当てるかは誰が決めますか?

Staking Routerが、DAOに登録された各モジュールの受入枠と配分規則を適用する。ノード運営者はバリデーションを担うが、プール全体の残高計算や利用者の出金を単独で支配するわけではない。

すべてのstETHはCoreプールから発行される?

いいえ。Lido V3のstVaultは、過剰担保されたVault内ETHを基に外部stETH持ち分を発行できる。共通トークンはCoreの内部持ち分とVaultの外部持ち分から成り、VaultHubの会計とDAO設定の上限に従う。

Easy TrackはLDO投票なしで何でも実行できますか?

できない。承認済みの実行モジュールに定められた操作だけを、認可された主体が開始できる。反対が総供給量の0.5%未満なら72時間後に実行可能となるが、待機期間が終わった後も実行前までは反対できる。

stETH保有者はLido DAOで投票できますか?

stETHを持つだけではLDOの投票力は得られない。Dual Governanceでは代わりに、stETH、wstETH、出金NFTを預託して提案の実行を遅らせ、条件を満たせば離脱手続きを進められる。

セキュリティ委員会はLidoの中核システムを更新できますか?

中核システムの更新はDAOが管理する権限下にある。CircuitBreakerやDeposit Securityの担当者が行えるのは、役割ごとに定められた緊急停止に限られ、一般的な更新権限や財務管理権限は与えられていない。

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