Ethena USDe

usde
時価総額順位 #24•Stablecoins, USD Stablecoin, Synthetic Dollar
CoinYQ コイン史

USDeは財務取引を財布へ移し、可動部分も持ち込んだ

2024年2月、Ethenaはベーシス取引をDeFiで移転できるトークンに包んだ。ドル単位は持ち運べても、ヘッジが自動になったわけでも出口が全員に開いたわけでもない。オフチェーン運用をオンチェーン残高へ変え、直接の入口と出口を技術と規約で分けた歴史である。

公開開始でベーシス取引がトークンになった

Ethena Labsは2024年2月19日をUSDeの一般公開日とし、Shardキャンペーンも始めた。ポイント型のインセンティブは流動性提供や利用に報いるもので、USDeの準備資産ではなかった。商品そのものは、キャッシュ・アンド・キャリー取引を発行者の運用へ置き換えた。資産を受け入れ、市場方向をヘッジし、その組み合わせたポジションを裏付けとしてドル建てトークンを発行する。

法定通貨型ステーブルコインとの違いは意図的である。Ethenaの文書では、値動きのあるBTC、ETH、SOL、承認済みのステーキング・トークンを無期限先物または期限付き先物のショートと組み合わせられる一方、流動性の高い安定資産は対応するショートなしで保有され得る。「デルタニュートラル」は目標とするエクスポージャーを表す言葉であり、すべての取引場所、商品、時点で完全に相殺されることの証明ではない。

担保は取引所外でも、ヘッジには取引所が要る

Ethenaは裏付け資産をCopper、Ceffu、Fireblocksなどの取引所外決済事業者へ送る。このモデルは、取引ポジションを支えるために担保を委任し、損益を頻繁に決済しながら、取引所の外で受益所有権を維持することを目指す。取引所の貸借対照表に置かれる資産額を減らす仕組みである。

ただし、仲介者は消えない。Ethena自身のリスク説明によれば、アクセス障害や可用性の停止は取引と発行・償還の流れを妨げ得る。取引所が破綻した場合、未決済損益の回収にはカストディアンの協力と法的な履行が必要になり得る。準備資産の証明は保有資産を示せても、稼働中のデリバティブ・ヘッジを一つずつ証明することとは別の問題である。

三つのトークンは三つの役割を持つ

USDeは移転可能な合成ドルであり、戦略収益が自動的に付くわけではない。USDeをステーキングすると、別のERC-4626持分証であるsUSDeを受け取る。報酬のUSDeがボールトへ入ると、sUSDe一口当たりに請求できるUSDeが増える。資金調達環境が悪化した場合は、保有者の残高からマイナス分を差し引くのではなく、報酬入金が止まり得る。この交換比率はUSDe建てなので、USDeの市場価格が変わればドル価値まで保証されるわけではない。

ENAはUSDeの高利回り版ではなく、ガバナンス資産として登場した。ENA保有者はリスク委員会のメンバーを選び、指定された提案へ投票できる。そのため「Ethenaの保有者」という表現だけでは不十分である。USDe残高、sUSDeのボールト持分、ENAの一票は、それぞれ異なる立場を表す。

V2は被害上限を置いたが管理者を消さなかった

発行はオフチェーンで作成された価格提示から始まる。承認済みの相手方が署名し、Ethenaの運営者が注文を確認して提出する。カストディアンの許可リストは担保の送付先を制限する。旧設計では侵害されたホットminterが極端な被害を生み得たため、V2は2024年7月8日に資産別ブロック上限、安定資産のデルタ検査、オンチェーンのホワイトリストを加えた。

2026年9月5日時点のUSDe ownerは0xe8dc0fab349ea169283c48ccfd09d797e6db7c94だった。owner専用のsetMinterは発行主体を変更でき、renounceOwnershipは常に失敗する。minterは0xe3490297a08d6fc8da46edb7b6142e4f461b62d3のV2だった。このアドレスだけがUSDeを新規発行する。保有者は自己残高を焼却でき、burnFromには承認額が必要であるため、ownerに他人の残高を任意に消す別権限があるわけではない。

V2ではMINTER_ROLEが発行注文を提出し、REDEEMER_ROLEが償還と承認済み残高の焼却を実行する。既定管理者は役割、対応資産、カストディ先、ブロック上限を変更できる。gatekeeperは発行・償還の全体上限をゼロにし、発行者、償還者、担保管理者の役割を取り消せる一方、既定管理者は後に上限や役割を戻せる。

規約は保有者と直接顧客を分けている

2025年8月の規約は、オンボーディングとホワイトリスト登録を終えた相手をMint User、それ以外のUSDe保有者をHolding Userと呼ぶ。Ethena BVIと直接取引できるのは前者だけである。適格な償還では、法令、手数料、コンプライアンス条件に従い、USDe一単位当たり名目1ドルを上限として、準備資産の比例持分に相当する対応資産を受け取る。

規約はUSDeを価値保存または前払アクセスとして扱い、Ethena BVIへの出資、参加持分、経済的権利、議決権を与えない。一般保有者はトークンを移転し、流通市場での流動性を求められるが、ウォレット残高を持つだけでは直接償還の顧客にも、預金保険で守られる債権者にもならない。

ドイツで発行者と管轄の境界が表面化した

BaFinは2025年3月21日、Ethena GmbHによるドイツでのUSDe公募継続を止めた。4月14日の命令では認可を要する事業の整理を命じ、Ethena GmbHはEUで営業できず、USDeの二次取引もEUで認められないと説明した。

6月25日、BaFinはEthena GmbHへの請求期間を8月6日までの42暦日とした。8月7日以降はEthena BVIに対してのみ請求でき、ドイツ、EU、EEAではGmbHが整理済みとみなされると説明した。これは管轄と発行者への請求経路の境界であり、世界中のトークンコントラクトが停止した証拠ではない。

現在のBVI経路にも地域制限がある。米国ユーザーはMint Userになれず、Ethenaのステーキング文書はEU・EEAの常居所者または登記法人にsUSDe取得を提供しない。したがってUSDeを移転できても、すべての地域で直接発行、償還、ステーキングを利用できるとは限らない。

プロジェクトが変化してきた過程

  1. 2024-02-19
    USDeが一般公開される

    EthenaはShardキャンペーンを開始し、この日をUSDeの公式な一般公開日と説明した。

  2. 2024-04-02
    ENAが別のガバナンス役割を担い始める

    EthenaがENAを公開し、ガバナンスと委員会に関する権限はUSDeやsUSDeではなくENAに結び付けられた。

  3. 2024-07-08
    Mint and Redeem V2が稼働する

    資産別のブロック上限、ステーブルコインのデルタ検査、オンチェーンのホワイトリストによって、単一ブロックで生じ得る運用リスクを狭めた。

  4. 2025-03-21
    BaFinがドイツでの新規提供を制限する

    BaFinはEthena GmbHによるドイツでのUSDe公募継続を禁止し、カストディアンに関連準備資産の凍結を命じた。

  5. 2025-04-14
    Ethena GmbHの認可対象事業に整理命令が出る

    BaFinはEthena GmbHがEUで営業できず、USDeの二次取引もEUで認められないと説明した。

  6. 2025-06-25
    Ethena GmbHへの42日間の請求手続が始まる

    対象保有者は8月6日までEthena GmbHへ請求でき、BaFinは8月7日以降の請求先をEthena BVIのみとした。

根拠と一次資料

最終根拠確認日: 2026-09-05

Ethena USDeとはどんなコイン?

USDeはEthenaの合成ドル・システムの中心にあるトークンである。銀行預金型トークンでも、プロトコルのガバナンス通貨でもない。Ethena BVIは承認済みの準備資産を受け入れてUSDeを発行し、裏付け資産の値動きが大きい場合は反対方向のデリバティブを運用する。現物とショートを合わせたポートフォリオを、現物資産だけよりも価格変動の小さい状態にすることが狙いだ。

混同されやすい三つの名称は分けて考える必要がある。USDeは移転可能なドル建て単位である。sUSDeはUSDeをステーキングして受け取るERC-4626の持分証で、報酬が入金されればUSDe建ての交換比率が上がり得る。ENAは委員選出や指定されたエコシステム投票に使う別のガバナンストークンである。いずれか一つを保有しても、残り二つの機能や権利が自動的に付くわけではない。

どんな課題を解決する?

Ethenaが取り組んだのは市場構造上の問題だった。暗号資産利用者は、準備金の全額を銀行に置かずにデジタル資産市場の中で使い続けられるドル単位を求めていた。2024年2月の公開開始では、キャッシュ・アンド・キャリー、つまりベーシス取引という既存の取引手法を、トークン発行者の財務運用へ組み込んだ。

この置き換えによって、障害が起きる場所も変わる。銀行準備型の発行者が銀行や短期証券に強く依存するのに対し、USDeにはデリバティブの資金調達、取引所での執行、カストディアンの可用性、担保の流動性、能動的なヘッジ管理が加わる。価格方向への露出は減らせても、相手方の破綻損失、スリッページ、ショートポジションの維持に費用がかかる局面まではなくならない。

どのような技術と仕組みで動く?

承認済みMint Userは、Ethenaのオフチェーン・システムで提示された価格に基づく注文へ署名する。審査後、Ethenaの運営者が注文をオンチェーンで提出し、受け入れ資産は承認済みのカストディアドレスへ移され、USDeが発行される。財務システムは値動きのある裏付けが増えると先物ショートを増やし、USDeが償還されると減らす。Copper、Ceffu、Fireblocksは開示された取引所外決済事業者の例で、裏付けを取引所の貸借対照表外に保ちながら取引ポジションを支えられるようにする。

直接償還には、規約上、ホワイトリスト登録済みのMint User資格が必要である。Ethena BVIは、USDe準備金に対する保有者の比例持分に相当する対応資産を、USDe一単位当たり名目1ドルを上限として返すことを約し、法令、手数料、規約上の条件が適用される。AMMでUSDeを取得しただけのウォレット所有者は、オンボーディングで承認されるまではHolding Userであり、それ以外の場合は流通市場の流動性を通じて退出する。

報酬は別の経路を通る。資金調達・ベーシス収益、対象となるステーキング収益、安定資産の利回りはUSDeへ換えられ、sUSDeコントラクトへ送られ得る。預入者はそのボールトに対する比例持分を受け取る一方、USDe自体は収益を生まない。資金調達がマイナスなら報酬入金がゼロになることはあるが、sUSDeコントラクトが保有者残高からマイナス分を差し引く仕組みではない。sUSDe一口当たりの比率はUSDe建てであり、USDeの市場価格が動けばドル価値の安定まで保証するものではない。

重要ファクトの要約

  • Ethena Labsは、Shardインセンティブ・キャンペーンを通じたUSDeの一般公開日を2024年2月19日と発表した。
  • USDeは承認済みの準備資産と、必要に応じた先物ショートを組み合わせる。EthenaはUSDCやUSDTと同じ種類の商品ではないと明記している。
  • 2026年9月5日時点で、Ethereum版USDeのownerは0xe8dc0fab349ea169283c48ccfd09d797e6db7c94、minterは0xe3490297a08d6fc8da46edb7b6142e4f461b62d3のMint and Redeem V2だった。ownerはminterを変更でき、所有権放棄はできない。USDeを新規発行できるのはminterだけで、保有者による焼却は自己残高または承認額の範囲に限られる。
  • Copper、Ceffu、Fireblocksが取引所外決済事業者として開示されているが、Ethenaは各社へのアクセス、運用、法的協力に引き続き依存する。
  • 直接発行・償還は、KYC/AMLなどのオンボーディングを完了し、ホワイトリスト登録されたMint Userに限られる。
  • 適格な償還で受け取るのは、準備資産の比例持分に相当する対応資産であり、USDe一単位当たり名目1ドルが上限となる。すべてのウォレットに対する無条件の現金支払約束ではない。
  • sUSDeは別のERC-4626ボールト持分で、USDe自体に報酬が自動的に付くわけではない。
  • ENAは別のガバナンストークンである。USDeやsUSDeがEthenaの商品であるというだけで、ガバナンス投票権になるわけではない。
  • Mint and Redeem V2は2024年7月8日に稼働し、資産別のブロック上限、ステーブルコインのデルタ検査、オンチェーンのホワイトリストを導入した。
  • BaFinの2025年措置はEthena GmbHによるドイツでの公募から始まり、EUでの営業・二次取引とGmbHへの請求経路まで対象とした。世界中のトークンコントラクト停止を立証するものではない。
  • 現行規約は米国ユーザーのMint User登録を認めず、現行ステーキング文書はEU・EEAの常居所者または登記法人にsUSDe取得を提供しないと記している。

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よくある質問(FAQ)

USDeはどう1ドル付近を目指す?

Ethenaは承認済みの準備資産を保有し、値動きのある裏付けには概ね反対方向となる先物ショートを運用する。承認済みの相手方による発行・償還と流通市場での取引が裁定経路になるが、結果はヘッジの執行、担保、相場の流動性に依存する。

USDe保有者なら誰でも直接償還できる?

できない。2025年8月の規約では、Ethena BVIでの直接償還にはKYC/AMLとホワイトリスト登録を終えたMint User資格が必要である。それ以外の保有者は、適格者にならない限り通常は流通市場で売却または交換する。

適格な償還利用者は何を受け取る?

規約が定めるのは、USDe準備金の比例持分に相当する対応資産であり、USDe一単位当たり名目1ドルを上限とし、手数料、法令、契約条件が適用される。すべての保有者に対して、請求時に銀行預金の1ドルを渡すという約束ではない。

USDe、sUSDe、ENAは交換可能な同じ資産?

異なる。USDeは合成ドルの単位、sUSDeは入金された報酬によってUSDe建て交換比率が上がり得るボールト持分、ENAはガバナンストークンである。

裏付け資産はどこに置かれる?

EthenaはCopper、Ceffu、Fireblocksを取引所外決済事業者として挙げている。この仕組みは資産を取引所の貸借対照表外に置きつつ、デリバティブ・ポジションを支えるために委任することを目指すが、事業者と取引所の運用は引き続き重要である。

sUSDe報酬はマイナスになる?

ステーキング・コントラクトには正の報酬だけを入金する仕組みのため、sUSDe一口当たりのUSDe交換比率は上昇または横ばいになるよう設計されている。資金調達・ベーシス収益が不足すれば新たな報酬入金はゼロになり得る。この比率はUSDe建てであり、USDeの市場価格が変わる場合のドル価値を保証しない。

誰がUSDeを発行できる?

2026年9月5日時点で、トークンのminterはMint and Redeem V2だった。内部のMINTER_ROLE保有者が検証済みの発行注文を提出し、REDEEMER_ROLE保有者が償還時に承認済みの利用者残高を焼却する。USDeのownerはminterを変更でき、所有権は放棄できない。一般保有者は自己残高を焼却できるが、USDeを発行したり、承認なしに他人の残高を焼却したりはできない。

BaFinは2025年に何をした?

BaFinはEthena GmbHによるドイツでの公募継続を止め、認可を要する事業の整理を命じ、同社のEUでの営業とUSDe二次取引は認められないと説明した。42日間の請求期間は8月6日に終了し、それ以降の請求先をEthena BVIとしたうえで、GmbHはドイツ、EU、EEAで整理済みとみなされた。

現在、直接発行やsUSDe取得から除外される地域は?

2025年8月の規約は米国ユーザーがMint Userになれないと定める。現行ステーキング文書は、EU・EEAに常居所を置く人または登記された法人へsUSDe取得を提供しないと記す。これは特定サービスの制限であり、ERC-20移転が世界全体で止まるという意味ではない。

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