CoinYQ コイン史

保管者を共同管理ネットワークに置き換えた実験

THORChainはBitcoinをEthereumトークンに見せかける代わりに、担保を預けたノードが入金を観測し、RUNEで値付けして別のチェーンの元の資産を送り出す仕組みを作った。一つの保管者の仕事を、ブロックチェーン、交代する署名集団、経済的な担保に分けたのである。その歴史は、それぞれの仕組みがどこで持ちこたえ、どこで破られたかを示している。

利用者には見えない中間コイン

BTC→ETH注文はEVM上で表したラップ資産ではなくBitcoinから始まる。入金がAsgard保管庫へ届くとBifrostの観測者が共同で確認し、処理システムがBTC:RUNEとRUNE:ETHを実行して、出金用の保管庫がEthereumのETH送金に署名する。利用者には一本の経路でも、RUNEはすべての通常プールの共通決済資産となる。

共通資産であることは、ネットワークが持つすべての資産の受領証であることを意味しない。プール持分の単位は提供した流動性を記録し、ノード担保は運営者の業務を支える。ウォレット内のRUNEはチェーン自身の資産だ。確認資料は、その残高にAsgardのBitcoin所有権、保証相場、ネットワーク収入の持分を与えていない。

誰も完全な鍵を持たないよう設計した共同署名

ノードは外部チェーンと通信するソフトウェアとBifrostを動かし、観測結果に投票して閾値署名の手続きに参加する。保管庫の鍵は複数の参加者に分かれ、所定の高い割合が協力しなければ使えない。保管庫を分割することで一つの署名集団が扱う資産額を制限する。活動ノードを交代させるchurnの手続きは旧保管庫を退役させ、新しい保管庫を作る。担保と違反時の削減が不正行為の経済的費用となる。

運営者が作動させる停止装置もある。Node Mimirは観測を続けたまま取引だけを止めたり、出金を待機列に残して署名を止めたり、流動性操作や外部チェーンの処理全体を停止したりできる。支払能力の報告は自動停止も発動する。利用者への影響はそれぞれ異なり、表示価格が古くなる、入金処理が待たされる、THORChainがブロックを作り続けても出金は待機列に残るといった事態が起こり得る。

2021年は入金観測、2026年は署名の前提が破られた

2021年7月の二つのEthereumルーター攻撃は、Bifrostに受け取っていない資産を受領したと思わせた。公式の事故報告は、接続インターフェースが十分に制約していないイベントの挙動を信頼したと説明する。ETHと相当の価値を持つERC-20資産が奪われ、一度は取引再開も早すぎた。プロジェクトの財務側は流動性提供者の損失を補填するとした。破綻点は外部スマート契約と観測者の間にあった。

公式報告によれば2026-05-15には、新しいノードが約635,000 RUNEを担保として預け、五つの保管庫集団の一つへ入り、約二日半でGG20署名の段階を864回故意に失敗させた。鍵の断片の小さな漏洩を積み重ねて秘密鍵を復元し、正規の承認と区別できない署名を作った。一つの保管庫から約1,070万ドルが流出した。自動的な支払能力検査による停止は残高不一致の後に反応し、残る四つの保管庫とEdDSAを使うSolanaは攻撃にさらされなかった。

復旧は外部からの検証可能性も変えた。v3.19.0は追加のセキュリティ修正を含む非公開の実行ファイルを告知した。ネットワークは公表しない防御策で再開できる一方、独立した検討者は公開THORNodeソースだけで実際の閾値署名システム全体を再現できなかった。ブロック検証の分散性と、すべてのセキュリティ構成要素の公開再現性は別の主張となった。

債務整理は誰が支払いを受けるかを明確にした

基礎となる交換システムの上にはTHORFi LendingとSaversがあった。2025-01-24のブロック19,562,016で、ノードは履行できなくなった負債を受けて両制度を停止し、未払いの請求額をドル基準で算定した。この整理はRUNE保有者を債権者にしなかった。被害を受けた請求に配分する210,000,000 TCYを発行し、ステーキングされたTCYへシステム収入の10%をRUNEで支払う仕組みを設けた。

この出来事は用途の一覧よりもトークンの境界を明確にする。RUNEはチェーンの安全と決済を支え、TCYは債務不履行から生じた明示的な収入配分の仕組みを持つ。流動性提供者とSaversの会計には別の引き出しリスクがある。プロトコル活動がRUNE価格に利益や損失をもたらしても、価格変化への露出は執行可能な支払請求権ではない。

上限は下がり、変更権限は活動ノードに残った

RUNEはネットワーク開始時に500,000,000枚だったが、焼却と移行失敗の後もその数字を掲げれば実際の供給を誤解させる。ADR-023は準備金から約64,900,000 RUNEを除去し、運営と攻撃被害への対応用に9,300,000を残して、最大供給設定MaxRuneSupplyを360,000,000にした。公開されたロック解除は終了し、ブロックごとの発行は今ではわずかで、システム収入を使う焼却は総量をさらに減らし得る。

その上限も合意ソフトウェアで変えられる。通常保有者は残高で投票せず、活動ノードがMimir設定と新しい版の採用を決め、多くの経済設定には約3分の2の支持が必要である。v3.20は対象ステーブルコインの交換がRUNEプールを迂回するための実験的なStable Reserveコードも導入した。初期設定は無効で、試験後に有効化できるという条件付きの発表なので、現在使える経路とは断定できない。RUNEは中心に残るが、ノード集合はその周りの経路を変更できる。

プロジェクトが変化してきた過程

  1. 2018
    研究が始まる

    メインネット回顧は、複数チェーンの実資産を扱うネットワークが稼働する前の2018年をTHORChainの起点とする。

  2. 2021-04
    Multichain Chaosnetが始まる

    MCCNがチェーン自身のRUNEと、実資金を使うチェーン間の流動性を導入する。

  3. 2021-07-30
    Ethereumルーターの障害を記録

    事故報告がBifrostを欺いた二つの攻撃と早すぎた取引再開を説明し、プロジェクトの共同資金による補填を約束する。

  4. 2022-06-22
    メインネットを宣言

    THORChainがChaosnetからの移行を告げ、チェーン自身の資産THOR.RUNEへの移行を促す。

  5. 2023-07-18
    旧RUNEの転換終了措置が完了

    BEP2・ERC-20からの交換率がゼロとなり、THOR.RUNEだけがネットワークの資産として残る。

  6. 2025-01-24
    THORFi請求を凍結

    ブロック19,562,016でLending・Saversを停止し、再編のために請求額をドル基準で算定する。

  7. 2025-05-05
    TCYを開始

    整理によって210,000,000 TCYを配分し、別の回復用トークンをステーキングした参加者へシステム収入の10%を配分する仕組みを設ける。

  8. 2026-05-15
    一つのGG20保管庫が奪取される

    交代で新しく入った悪性ノードが鍵を復元し、五つの保管庫中一つから約1,070万ドルを流出させる。

  9. 2026-08-24
    v3.20が実験的な交換経路を導入

    v3.19復旧後、v3.20はプロトコル保有流動性(POL)の運用設定と実験的なStable Reserveコードを導入する。RUNEプールを迂回するステーブルコイン経路は初期設定で無効とされ、試験後に有効化できると発表された。

根拠と一次資料

最終根拠確認日: 2026-09-05

THORChainとはどんなコイン?

THORChainは、各チェーン上の元の資産を交換するCosmos SDKベースの取引処理システムであり、分散した資産保管ネットワークでもある。BTCをETHへ交換する利用者は、Bitcoin上のAsgardアドレスへBTCを送る。ノードが入金を観測すると、二つの流動性プールがRUNEを介して価格を計算し、複数の運営者が共同で作る閾値署名により保管庫からEthereumのETHを送る。正規資産はERC-20契約ではなく、THORChain自身の台帳が扱う基本資産THOR.RUNEである。公式の資産表記文書は旧BNB.RUNEとETH.RUNEがすでに使われていないと明記する。

RUNEは通常プールの基軸資産、ノードが預ける担保、THORChainの手数料資産、報酬計算の要素として使われる。これらを一つの投資上の約束と捉えてはならない。ノードやプールに参加せずウォレットで保有するだけでは、検証者の投票権、保管庫の鍵、固定価格での償還、プール内資産の所有権や、文書で確認されたプロトコル収入への請求権を得るわけではない。

どんな課題を解決する?

チェーン間取引には、しばしば資産保管者、元の資産を別のチェーンで表すラップ資産、ブリッジ契約が介在する。THORChainは代わりに独立したノードに外部チェーンを監視させ、そのチェーン上のアドレスを共同運営させる。企業を決済経路から外しても、保管に伴うリスクは消えない。入金から出金まで資産はネットワークの保管庫にあり、安全性は観測処理、合意ソフトウェア、閾値暗号に依存する。

重要なのは、一つの管理主体が署名できるかだけでなく、分散した複数の構成要素が同時に破られ得るかである。Bifrostの観測には67%の同意、Asgardの出金には所定の高い割合の署名参加が必要だ。担保は盗難の経済的費用を高め、ノード交代は署名集団を入れ替える。支払能力の検査は帳簿と元のチェーンの残高を照合し、Mimir設定は機能別の停止を可能にする。2026年の攻撃は、反復失敗から鍵が復元されると、署名自体は正規のものに見えることを示した。

どのような技術と仕組みで動く?

通常の経路では、対応する外部資産ごとにRUNEとの流動性プールがある。資産とRUNEの交換は一つ、二つの外部資産の交換は二つのプールを使い、利用者が中間のRUNEを持つ必要はない。プールの資産比率が価格を決め、流動性に対して注文が大きいほど価格変動に基づく流動性手数料が増える。出金先チェーンの変動ネットワーク費用も必要で、分割交換は実行を時間的に分けられる。v3.20の実験的なStable Reserveは限定的な例外のためのコードである。有効化された場合、対象ステーブルコイン同士をプロトコルの保有在庫から1:1で約定し、在庫が足りなければ通常プールへ戻る設計だ。初期設定は無効で、試験完了後に段階的に有効化できるとの発表であり、現在の稼働を確認したものではない。

各THORNodeは外部チェーンと通信するBifrostソフトウェアを動かし、THORChain台帳を検証し、閾値鍵の生成と利用に参加する。保管庫は複数の集団に分けられ、活動ノードを入れ替えるchurnという手続きで交代する。RUNE担保は活動ノードの選定と違反への制裁に使われ、多くの設定は単純な保有量ではなくNode Mimirによるノード投票で変わる。HALT<CHAIN>TRADINGはチェーン別取引、HALTSIGNING<CHAIN>は署名、HALT<CHAIN>CHAINは対象チェーンの処理を停止する設定である。流動性の操作やネットワーク全体を停止する仕組みもある。自動的な支払不能報告で取引を止められるが、利用画面を提供するサービスも合意の停滞と最新の入金アドレスに付いた停止表示を確認する必要がある。

供給量も明示的な状態移行で変わった。ADR-023は準備金口座Reserveから約6,490万RUNEを焼却し、930万を残して上限を360,000,000へ下げた。文書によれば初期供給はネットワーク開始時に作られ、段階的なロック解除も完了した。システム収入を使う焼却は続き、残る準備金を超える新たなRUNEが必要なら、別の設計決定案ADRとノード投票が必要になる。これはソフトウェアの合意規則であり、私法上の償還契約ではない。

重要ファクトの要約

  • 正規資産はTHORChain自身のTHOR.RUNEであり、旧BNB.RUNEとETH.RUNEは同ネットワークで使われない。
  • 通常のチェーン間取引は外部資産とRUNEのプールで決済し、RUNE以外の二資産間では内部で二段階の交換を行う。
  • Bifrostの外部チェーン観測には67%の同意、Asgard出金には閾値署名の高い参加基準を満たす必要がある。
  • RUNE担保がノード参加を支え、RUNEを持つだけではNode Mimirの投票権を得られない。
  • Mimirと支払能力の検査は取引、署名、流動性操作、チェーン観測、またはネットワーク全体を停止できる。
  • 準備金約6,490万RUNEを焼却して930万を残した後、最大供給は360,000,000となった。
  • 初期RUNEはネットワーク開始時に作られ、公開されたロック解除は完了した。システム収入を使う焼却は供給をさらに減らし得る。
  • 2021年のETHルーター攻撃はイベント解釈を悪用し、プロジェクトの財務側は被害を受けた流動性提供者への補填を約束した。
  • 2025年のTHORFi整理は210,000,000 TCYを作り、システム収入の10%を報酬制度に預け入れた(ステーキングした)TCYへ配分した。通常のRUNE保有者の権利ではない。
  • 2026年のGG20攻撃は五つの保管庫中一つから約1,070万ドルを流出させ、v3.19復旧には非公開のセキュリティ修正が含まれた。

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よくある質問(FAQ)

RUNEはERC-20トークンか。

現在の正規資産はTHORChain自身のTHOR.RUNEである。公式の資産表記文書は、旧Ethereum・BNB上の形態が使われておらず、THORChain内で価値を持たないとしている。

BTCをETHへ交換するためにRUNEを買う必要があるか。

ない。取引処理システムがBTC→RUNEとRUNE→ETHを内部で処理し、EthereumのETHを宛先へ送る。ただし双方のプールがRUNEを持つため、中間資産は経済設計上重要である。

すべてのRUNE保有者が投票できるか。

できない。活動ノードの運営者がNode Mimirで投票する。技術FAQは、多くの経済設定には約67%の支持が必要で、一部の運用設定にはより低い基準が使われると説明している。

誰がネットワークを止められるか。

ノード投票と自動規則が、取引、署名、流動性提供の操作、チェーン観測ごとのMimir停止設定と、ネットワーク全体の停止を実行できる。停止は返金や出金を遅らせ得る安全装置であり、資産回収の保証ではない。

3億6,000万枚の供給上限は不変か。

ADR-023と承認された状態移行後の現在のソフトウェア上限である。準備金を超える必要が生じれば新しいADRとノード投票が必要になるため、不変の契約上の約束ではなく合意によって管理される限度である。

RUNEは保管資産やプロトコル収入への請求権を与えるか。

確認した資料は技術的な用途を示すが、会社持分、固定価格償還、保管庫の資産所有、保険、通常保有者への契約上の収益分配を定めない。システム収入10%の仕組みは、THORFi整理のための別トークンTCYに明記されている。

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